【番組解読】 皐月賞トライアルと日本ダービーの関係について |
ダービーや菊花賞が持つ実施目的や存在意義に比べると、皐月賞については、ダービー路線の過程で生まれる副産物ぐらいの印象でしかありません。ダービー前哨戦としての存在価値は確かに大きいが、同時に、それ以上の意味も見い出せない中途半端なG1レースというイメージ。 しかし見方を変えれば、G1レースである皐月賞だからこそ、このレースが有する優先出走権は、他のダービートライアルで発生する優先出走件を有効性で上回ると想像できます。だとすれば、3歳クラシックに用意された優先出走権制度において、皐月賞はもっとも象徴的なレースといえるでしょう。だからこそ、皐月賞に対する優先出走権、弥生賞・スプリングS・若葉Sに設定されている計8頭の優先出走権は、あらゆる予想ファクターの中でも最優先すべき皐月賞1着条件であると推測できます。 次に、3歳クラシックにおける一連の優先出走権が、皐月賞トライアルに始まり、ダービーに続くものであると仮定した場合、皐月賞優先出走権8頭のうち、1頭分は皐月賞馬のため、さらに1頭分はダービー馬のために用意されている事になります。では、皐月賞TR3レースの優先出走権が、皐月賞・ダービーにどのように反映されているかといえば、皐月賞優先出走権で生じた各競走馬の優劣は、皐月賞・ダービーの結果とは決して矛盾しない事がわかります。 例えば、もしも05年ダービーでアドマイヤジャパン(弥生賞2着)やマイネルレコルト(弥生賞3着)が皐月賞馬ディープインパクト(弥生賞1着)に勝った場合、皐月賞馬に勝るダービー馬の地位が揺らぐ事になりますが、過去の3歳クラシックにおいて、このような事は一度も起きていません。(※表1参照) さらに、もしもディープインパクト(弥生賞1着)に対し、ダンスインザモア(スプリングS1着)やアドマイヤフジ(若葉S1着)がダービーで勝つ可能性があるかといえば、過去のクラシックを振り返ってみる限り、皐月賞馬・ダービー馬それぞれが有する皐月賞優先出走権が、異なるトライアルレースによるものである例は一度もありません。(※表2参照) つまり、弥生賞の優先出走権を有する皐月賞馬が誕生した場合、スプリングS(1〜3着)・若葉S(1〜2着)の5頭のいずれかがダービーを勝ったケースは一度もない。同じく、スプリングSの優先出走権を有する皐月賞馬が誕生した場合、弥生賞(1〜3着)・若葉S(1〜2着)の5頭のいずれかがダービーを勝ったケースもない。 そうすると、弥生賞・スプリングS・若葉Sのうち、1レースで生じた優先出走権はダービーに至るまで効果を発揮するが、他の2レースについては全く無駄な優先出走権しか発生しない事になります。どのレースが機能するかを事前に見極める事ができれば、皐月賞の1着予想だけではなく、ダービーの1着予想にも役立つ事になります。しかし実際には、皐月賞TRが始まる直前、1回東京・2回京都終了時点でダービー馬は内定しているはずなので、ダービー内定馬が選んだトライアルレースが機能するという見方も出来ます。 いずれにしても、もしも弥生賞馬に相応しくない戦歴を有する馬が弥生賞を勝った場合、ここで発生する優先出走権が皐月賞・ダービーで機能するはずがありません。同じくスプリングSについても同様な事がいえますし、ゾロ目・枠連万馬券などの変則レースによる優先出走権も当然のように機能しません。ちなみに、91年新設の若葉Sについては、このレース自体が正規ダービー馬の戦歴に反する性格のものなので、基本的には無視して構わないはず。同レースの優先出走権を有したトウカイテイオーがダービーを制した事については、トライアルレース全体に見直しが加えられた年にのみ起きうる例外的な事例と捕らえるべきでしょう。 では、弥生賞らしい弥生賞、スプリングSらしいスプリングSとはいかなるものかといえば、正規タイプのダービー馬がここをステップにしてクラシックに臨む事を考えれば容易に推測できます。年度番組発表に伴う競走規定変更により、たびたび変則的な3歳クラシックが実施されていますが、それに目を奪われる事さえなければ、皐月賞優先出走権の本質を見極める事など決して難しい事ではないと思います。 |
【表1】皐月賞馬が有する優先出走権が、ダービー本番でどのように反映されているのか (例)93年の場合、もしも弥生賞でのWチケット・Nタイシンの着順が逆だと、皐月賞馬>ダービー馬という構図になってしまう |
皐月賞馬が皐月賞優先出走権を得たトライアル競走(ダービー本番の着順) | ||||||||
1着馬(ダービーの成績) | 2着馬(ダービーの成績) | 3着馬(ダービーの成績) | ||||||
91 | 若葉S | トウカイテイオー | 1着 | アサキチ | 不出 | 皐月賞トライアル変更 | ||
92 | スプS | ミホノブルボン | 1着 | マーメイドタバン | 8着 | ダッシュフドー | 不出 | |
93 | 弥生賞 | ウイニングチケット | 1着 | ナリタタイシン | 3着 | ステージチャンプ | 9着 | |
94 | スプS | ナリタブライアン | 1着 | フジノマッケンオー | 4着 | イブキダイハーン | 不出 | |
95 | 若葉S | ジェニュイン | 2着 | マイネルブリッジ | 7着 | |||
96 | 弥生賞 | ダンスインザダーク | 2着 | ツクバシンフォニー | 不出 | イシノサンデー | 6着 | |
97 | 弥生賞 | ランニングゲイル | 5着 | オースミサンデー | 不出 | サニーブライアン | 1着 | 皐月賞トライアル変更 |
98 | 弥生賞 | スペシャルウィーク | 1着 | セイウンスカイ | 4着 | キングヘイロー | 14着 | |
99 | テイエムオペラオー=優先出走権なし | |||||||
00 | 弥生賞 | フサイチゼノン | 不出 | エアシャカール | 2着 | ラガーレグルス | 不出 | |
01 | 弥生賞 | アグネスタキオン | 不出 | ボーンキング | 4着 | ミスキャスト | 不出 | |
02 | ノーリーズン =優先出走権なし | |||||||
03 | スプS | ネオユニヴァース | 1着 | サクラプレジデント | 7着 | マイネルイェーガー | 不出 | |
04 | スプS | ブラックタイド | 不出 | キョウワスプレンダ | 4着 | ダイワメジャー | 6着 | |
05 | 弥生賞 | ディープインパクト | 1着 | アドマイヤジャパン | 10着 | マイネルレコルト | 5着 | |
06 | スプS | メイショウサムソン | 1着 | フサイチリシャール | 8着 | ドリームパスポート | 3着 |
【表2】皐月賞とダービー馬、皐月賞TRの成績比較 |
皐月賞馬 | ダービー馬 | ||||
84 | シンボリルドルフ | 弥生賞1着 | シンボリルドルフ | 弥生賞1着 | |
85 | ミホシンザン | シリウスシンボリ | |||
86 | ダイナコスモス | 弥生賞2着 ゾロ | ダイナガリバー | なし | |
87 | サクラスターオー | 弥生賞1着 | メリーナイス | なし | |
88 | ヤエノムテキ 代替 | なし | サクラチヨノオー | 弥生賞1着 代替 | |
89 | ドクタースパート | スプS1着 | ウィナーズサークル | なし | |
90 | ハクタイセイ | なし | アイネスフウジン | 弥生賞4着 | |
91 | トウカイテイオー | 若葉S1着 | トウカイテイオー | 若葉S1着 | クラシックTR変更 |
92 | ミホノブルボン | スプS1着 | ミホノブルボン ゾロ | スプS1着 | |
93 | ナリタタイシン | 弥生賞2着 | ウイニングチケット 記念 | 弥生賞1着 | |
94 | ナリタブライアン | スプS1着 | ナリタブライアン | スプS1着 | |
95 | ジェニュイン | 若葉S1着 | タヤスツヨシ ゾロ | なし | |
96 | イシノサンデー ゾロ | 弥生賞3着 | フサイチコンコルド | なし | |
97 | サニーブライアン | 弥生賞3着 | サニーブライアン | 弥生賞3着 | クラシックTR変更 |
98 | セイウンスカイ | 弥生賞2着 | スペシャルウィーク | 弥生賞1着 | |
99 | テイエムオペラオー ゾロ | なし | アドマイヤベガ | 弥生賞2着 | |
00 | エアシャカール | 弥生賞2着 | アグネスフライト | なし | |
01 | アグネスタキオン | 弥生賞1着 | ジャングルポケット | なし | |
02 | ノーリーズン 単万 | なし | タニノギムレット | スプS1着 | |
03 | ネオユニヴァース | スプS1着 | ネオユニヴァース | スプS1着 | |
04 | ダイワメジャー | スプS3着 | キングカメハメハ | なし | |
05 | ディープインパクト | 弥生賞1着 | ディープインパクト | 弥生賞1着 | |
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