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■#01 競馬番組表について

 片岡勁太氏の著書が世に出て以来、競馬番組表を解析する手法は年を追うごとに複雑怪奇なものとなりました。とはいっても、私自身はかなり前から片岡氏の著書に興味を持たなくなったし、他の番組系論者が競馬雑誌に載せる記事を立ち読みする事も無くなりました。
 その理由は、一言でいうと難解過ぎるから。んなわけで、『もっとシンプルに、もっと根本的な部分を』という発想で競馬番組表と対峙。そうして私の目に見えてきたものは、片岡氏をはじめとする先駆者の競馬番組論とは全く異なるものになりました・・・と思います。
 まぁ、著作本や競馬雑誌を読む機会が皆無に等しいわけだから、本当のところは自分でもよく分かりません。実際には『似たり寄ったり』なのかもしれません。そのへんの判断は、当サイトにお越し頂いた皆さんに委ねたいと思います。

 では、まずはじめに、『競馬番組表とは何ぞや?』みたいな話から。

 国が定める競馬法にそって、日本中央競馬会法が定められ、その実施方法を年ごとに計画化されたものが競馬番組表です。仮に、この一連の流れが無くなり、競馬番組表が国の管理から離れた場合、JRA競馬は国営競馬以前の“闇競馬”に成り下がってしまいます。
 国がJRAに求めるもの。それは『公正競馬』であり、言い換えれば、それこそが『競馬番組表の主旨』という事です。
 まぁ、わざわざ書く必要も無いほどに当然な話ですが、ここんところをスルーしてしまうと、『税収を目的(?)とした国の陰謀』みたいな話になっちゃうと思うんです。

 国がJRAに対して公正な競馬を求める。とはいっても、JRAにしても監視する立場なわけで、実際に公正な競馬を実施するかどうかは、国の指針(=競馬番組表)を現場で実行する調教師や騎手の良心に委ねることになります。平たく言えば、『昔みたいなウサン臭いケイバはヤメなさい』と、国やJRAの意思が競馬番組表に込められているわけです。

 では、国やJRAが嫌う『ウサン臭いケイバ』とはどういうものか。たとえば『本番前のシンザン』。デビュー以来、無敗の成績で皐月賞を勝ちながらも、ダービー前のオープン一般競走を2着。明けて4歳秋の天皇賞を勝った史上初の4冠馬は、有馬記念の前に使ったオープン競走でもお約束の『本番前のひと叩き』。中央競馬の歴史を塗り替えたスターホースが、日本中が注目する中で“正々堂々と”ヤラズをしでかす。競馬会の面目丸つぶれです。調教師の思惑ひとつで、勝てる馬が負けてしまう。こんな状況を正当化してしまえば、もしも本当に八百長競馬が行われた場合にも、ヤラズが不正の隠れミノになってしまいます。

 JRAが目指す、より公正な競馬を実現するためには、番組表の整備、競走規定の見直しが必要不可欠です。強い馬が勝ち、弱い馬は負ける。ダービーはダービー馬らしい馬が勝ち、天皇賞は天皇賞馬らしい馬が勝つ。そのための工夫が番組表には込められているのです。
 ここで強調したいのは、はじめにダービーありき、はじめに天皇賞ありきという点です。競走規定が変更されたのだから、昔のダービーと現在のダービーは違う、昔の天皇賞と現在の天皇賞は違うという発想は全く不必要だという事です。
 国内で生産・調教された3歳馬のチャンピオンを決めるためのダービー。同じく古馬のチャンピオンを決めるための天皇賞。仮に、外国馬がダービーや天皇賞を勝つ事があったとしても、それはあくまでもレース結果が本来の目的と合わなかっただけの話。JRAの工夫(=番組表)が正しく機能しなかったに過ぎません。

 95年の1月。阪神・淡路大震災により、この年の春季番組は急遽変更される事になりました。これにより、95年の天皇賞・春は本来の目的とは異なるレース結果を生み、本来の天皇賞馬とは異なる1着馬が生まれます。もしも番組変更がレース結果に影響しないとすれば、番組自体が元々ガラクタ同然のルールという事になるからです。
 89年1月の昭和天皇崩御。1回中山・1回京都が変更され、4月の天皇賞開催が不透明な中で行われた春季番組。国内の公営ギャンブル全体が自粛される中、中央競馬だけが『いつも通りの競馬』を続けられるはずもありません。
 2歳から3歳にかけて、ほぼ1年を費やして3歳チャンピオンを決めるダービー。もし前年と異なるルールで春季番組が行われた場合、1年をかけてダービー馬を決める工夫(=番組表)が機能するはずがありません。

 このように、毎年のように行われるルール改正により、ダービーや天皇賞が本来の目的を失うケースは決して少なくありません。しかし逆な見方をすれば、ルール改正や突然の番組変更などの影響を受けない中では、ダービーや天皇賞は昔と変わらぬ本来のレース結果、ダービー馬らしいダービー馬、天皇賞馬らしい天皇賞馬を生むのです。それがシンボリルドルフであり、ディープインパクトであるのです。

 84年のグレード制導入により、JRA競馬は大きな変貌を遂げ、シンボリルドルフは新しい時代の指針となった?

 決してそのような事はありません。グレード制導入自体は、既存の重賞競走を3つのグループに分けただけの話。新設されたレースや、格上げされたレースもありましたが、そのほとんどは短距離競走・ダート競走・牝馬限定競走に関するものです。
 対して、ルドルフが走った3歳クラシック、83年の2歳競走と84年の3歳競走は、前年度とは全くといって変わらぬ内容、『いつも通りの3歳クラシック』で実施されています。(正確には弥生賞の1着賞金が増額されている)
 05年のディープインパクトもそう。05年の競馬番組表に、3歳クラシックに関わる変更点は皆無に等しい。だからこそ、04年の11月に05年度競馬番組表が発表された際、私は自信を持って3冠馬の誕生を予想しました。
 このように、番組改正や競走規定の影響を受けないのであれば、強い馬は当然のように勝ち続けるのです。極端な話、何年にも渡って競馬番組が前年度と変わらぬ内容で実施されれば、シンボリルドルフやディープインパクトは毎年毎年生まれる事になるわけです。強い馬が勝ち、弱い馬は負ける。馬鹿馬鹿しいほど当たり前の話ですよね。

 いずれにしても、競馬番組表に込められたJRAの意思が実際の競馬に反映されるかどうかは、開催を管理するJRAが直接的に手をくだすものではなく、競馬番組表という『JRAの指示』を受ける調教師や騎手がレース結果の鍵を握っています。

 『JRAによるオペレーション』という発想が私には無いのです。

 競馬番組表はJRAの意思だと書きました。しかし、実際のところ、年間3400以上のレースをきめ細かく編成する知識や経験がJRAにあるとはとても思えません。農水省天下りの役員や、一流大学卒業の“生まれて一度も馬券を買った事のない”一般職員が、極度に閉鎖的な競馬サークル全体を牛耳る事など出来ると思いますか?調教師や馬主、生産者の意思を無視した番組表など、彼らの反発を食ってしまうのが関の山です。
 調教師らの意思を尊重し、彼らが納得するような番組を編成し、彼らに反対されない規定変更を行う。恐らくは、11月に次年度の年間番組表が発表されるまでに、事前の打ち合わせが何度も何度もあると思います。発表された番組表を見た現場の調教師が、その内容に驚いたなんて話を聞いた事がありますか?

 つまり、調教師を管理するためのルールが、当の調教師たちによって作られているのと、さほど変わらないわけです。



(つづく)


『東京優駿大競走編成趣意書』

 輓近競馬の隆昌に伴い出場の馬数漸次増加しその資質またようやく改善の域に達し国防ならびに産業上国家に寄与することすこぶる大なるものあるはまことに幸慶にたえざる所とす。かくしてわが競馬界の前途に対する産馬家の期待いまやいよいよ深刻なるべきはここに疑を存ぜざる所とす。

 ひるがえってわが競馬界の現況をみるに創業日なお浅く業態いまだ改善を期すべきもの甚少ならざるべし。しかりといえども、いたずらに欧米先進国の範に模して興趣的偏重の弊に堕することを避け一意わが国情に照して毫も国家の要望に反する所なく、すなわち堅実強健にしてかつ持久力に富む馬産を目的として常にその資源に任ずるの覚悟を要すべきは斯業に従事する者の須叟もゆるがせにすべからざる責務なりと信ず。

 本倶楽部深く顧みる所ありて業態改善の一端としてここに別記条件にもとづき東京優駿大競走を創設し広く全国に良駿を求めて能力の厳選を試みむとす。しかして本競走に出場せしむべき馬は二才幼駒の秋季において初めて出馬投票申込を受け四才の春季にいたり実際の競走に参加せしめむとするものなるをもって、この間生産者に対しては早期より一定の目途を定て適切なる育成調教をとげしむるの便宜を供するとともに登録により必然馬の価格を向上せしめて経済的採算を有利に導くの一助となるのみならず生産者に対し特殊の刺激を与えて競争心を喚起せしめ、かつ趣味を豊富ならしむるにいたり斯業奨励の方途としてその効果すこぶる大なるものあるべく、その収穫は甚少ならざるを確信するものなり。

(「日本競馬史 第3巻」(日本中央競馬会))



【私的口語訳】

 近ごろ競馬の隆盛に伴って出走頭数はしだいに増加し、その資質もまたようやく改善の域に達して、国防や産業の上で国家に役立つことが非常に大きいことがあるのは本当に幸せで喜ばしいことである。このようにしてわが競馬界の先行きに対する馬を育てる者たちの期待がまさに今にも差し迫っているということは疑う余地もないところである。

 私たち競馬界の現在のありさまを考え直してみると、競馬が始まってからの期間はまだ浅く、現在でも業態の改善をした方が良いという事柄は決して少なくないだろう。だからといって、むやみに欧米の競馬先進国の形式を真似して、見た目の面白さばかりを重んじるという弊害に陥ることは避けて、ひたすらにわが国の実情に照らして、国家が要望することに少しもそむくことなく―――つまり体が非常に丈夫でその上持久力に富んだ馬の生産を目的として、常にその役目を引き受ける心構えを必要としなければならないということは、競馬に従事する者はほんのわずかの間でもいいかげんにしてはならないという責務があると信じる。

 東京競馬倶楽部は深く顧みるところがあって、業態改善の一つとして別記条件に基づいて東京優駿大競走を創設し広く日本全国からより良い競走馬を求めて能力の厳選を試みることにする。それから本競走に出走しようとする競走馬は1歳の秋季に初めて出馬投票の申し込みをし、3歳の春季になって実際の競走に参加するということで、この間生産者に対しては早くから一定の目標を定めて適切な育成・調教をするための便宜に役立てるとともに、出走登録をすることによって必然的に馬の価格を向上させて経済的な採算を有利な方向に導く助けの一つになるだけでなく、生産者に対して特別な刺激を与えて競争意識を呼び起こさせ、その上楽しみを豊富にすることになり、競馬奨励の方法としてその効果は非常に大きいものがあって、その収穫は決して少なくないものになると確信するものである。